少しマニアックな歯科の話②~歯肉圧排~
「歯肉圧排」とは
前回から掲載を始めました「少しマニアックな歯科の話」第二回目は「歯肉圧排」がテーマです。
歯肉圧排とは、「物理的(歯肉圧排糸などを使用)あるいは化学的(収斂剤などを使用)さらには外科的(電気メス、レーザーなどを使用)な方法によって、支台歯または窩洞周囲の歯肉を排除する手技の総称」です。
これでは何のことかイマイチわかりにくいので、もう少しわかりやすく説明を試みると・・・
「詰め物もしくは被せ物を作るために、形を整えた歯の周囲の歯肉を様々な方法で、排除する(よける)こと」となります。
以下の写真は、実際に歯肉圧排を行ったところです。

被せ物を入れるために歯の形を整えたところで

歯肉圧排糸という細い糸を、歯と歯肉の境目に挿入します。

糸を挿入した状態で数分置いた後に、印象採得(型採り)をしたものです。
では、なぜこの「歯肉圧排」という処置を行うのかといいますと、一言で表してしまえば「歯と歯肉の境界を明確にするため」です。
詰め物、被せ物を作るためには印象採得(型採り)が必要です。その際、形を整えた歯と周囲の歯肉との境界が不鮮明だと、適合の良い被せ物が製作できないのです。適合が悪ければ、治療した歯の予後(経過)にも悪影響を及ぼします。そのため、非常に重要な治療のプロセスの一つなのです。
しかし、この歯肉圧排という処置も、前回お話し致しました「ラバーダム防湿」と同様に、大なり小なり苦痛を伴う処置です。通常であれば、無麻酔で行うことの多い処置ですが、歯肉を押し広げるような操作ですから当然多少の痛みを伴います。
一時的な苦痛の先に、真の利益をご提供できると信じ私たちは日々の臨床にあたっています。