自家歯牙移植術について その2
前回からの続き
前回は 、『自家歯牙移植術は、すぐにダメになってしまう(予後が悪い)』との理由で 、これを採用している歯科医師がとても少ないことをお伝えしました。
どうしてすぐにダメになってしまうのだろう・・・ 何に問題があるのだろう・・・
私が考える、自家歯牙移植術の予後が悪くなる原因は2つあります。
そのうちの1つは『自家歯牙移植術を行う術者の技術上の問題』
もう1つは『適応条件の誤り』です。
自家歯牙移植術を行う術者の技術上の問題
自家歯牙移植術を行うのに、埋入窩の形成以外は、特別な器具も 特別な技術も必要ありません。
- ・基本的な局所麻酔を丁寧に行うこと
- ・基本的な虫歯除去を丁寧に行うこと
- ・基本的な抜歯を丁寧に行うこと
- ・基本的な歯周外科手技(切開・縫合)を丁寧に行うこと
- ・基本的な根管治療を丁寧に行うこと
- ・基本的な補綴処置を丁寧に行うこと
これらは、すべて日常臨床で普通に行うべきことです。
ただし、大事なことはこれら基本的なことを“丁寧に”行う必要があります。
自家歯牙移植術は、これら基本的なことを“丁寧に”行う事の集大成にすぎません。
埋入窩形成は、インプラント窩の形成さえできれば、ほんのちょっとの応用でしかないのです。
自家歯牙移植術がうまくいかないのであれば、基本的な日常臨床を見つめなおす必要があるでしょう。
この年になると若手歯科医師から、臨床上における相談を受けることが多くなってくるのですが、最新鋭のテクニックや設備に飛びつきたくなる若手たちに、事あるごとに『基本の大切さ』を口酸っぱく指導しています。
たとえば
『インプラント治療を手がけるようになってから、歯周外科セミナーに参加する』 『根管治療が苦手だから、マイクロスコープを導入したりする』
のではなく
『歯周外科の基本を理解してから、インプラント治療を手がける』 『ブラインドでの根管治療を理解してから、マイクロスコープを導入する』
というように、発想を変えることが必要になるでしょう。